【対談】元侍スコアラー志田宗大が読み解く、AIが選んだ12球団分析の8つの物差し
ドラフト会議を前に、AIを使ってプロ野球12球団の戦力を分析しました。AIが選んだ指標は、プロの目にはどう映るのか。元WBC日本代表のスコアラーで当社シニアアナリストの志田宗大と、代表の村澤清彰が、YouTubeで語った内容を対談形式でお届けします。
AIに12球団を分析させてみた
村澤:ライブリッツ代表の村澤です。今日は、元WBC日本代表のスコアラー・アナリストの志田くんを迎えて、データ分析について話したいと思います。10月10日の番組でも分析を紹介したんですが、ドラフト会議があるので、それに向けて12球団の分析をやってみました。我々はAIを使っている会社なので、「AIを使って、まずは各球団を分析してみてくれ」というところから始めています。
志田:レーダーチャートで見せてもらって、これはかなり精度が高いんじゃないかと思って見ていました。
村澤:AIが出してきた分析の軸は8つです。先発・救援の投手と、打撃、守備などがあるんですが、まずはこの分析の軸について聞いていきたいと思います。
先発力 ― なぜFIPではなくRA9なのか
村澤:1つ目は先発力。チームの強さの軸になるところだと思うんですが、AIが出してきたのは、先発のRA9(9イニングあたりの失点)と、先発1登板あたりの投球回。それから、登板の半数以上が先発の投手を集め直して集計しています。この辺りの指標について、何かありますか。
志田:少し面白いなと思ったのが、RA9をAIが採用したところなんですよね。投手の能力を示す指標としては、FIPを使うのがスタンダードかなと思っていたんですが、AIだとRA9で行くんだ、というのが興味深いところです。
志田:FIPは、四球・本塁打・三振という、投手単体の能力を示す3つの要素で作る指標だと言われています。そこで来るのかなと思いきやRA9を採用した。その意味を、もう少しAIに尋ねてみたいところですね。RA9には、エラーなど投手の裁量以外の出来事も入ってしまうので、それでもこれを選んだのには何かしら意味があると思います。
村澤:考え方としては、FIPは投手1人1人の能力で、チームの先発力となると、守備も含めた失点で見るということなのかな。
志田:そうですね。深読みかもしれませんが、僕が勝手に読み解くと、そういうアクシデントがあったとしても乗り越えたのか、乗り越えなかったのか。結局、何点取られたのか。そこまで含めて先発の能力として見ているのかな、という気がします。
村澤:1登板あたりの投球回を入れているのも面白いと思っていて。最近は5回、6回で継投する分業制が進んでいますが、この辺りはどうですか。
志田:先発の役割として、イニングをいくつ食えるかは非常に大事だと思うんです。しっかり成績を残しつつ、イニングを食っていかなければいけない。いろんなアクシデントも乗り越えつつ、どれだけイニングを投げたのか。そこを入れてきたのは、おそらくそういうことなんだろうと思います。
救援力 ― リリーフには「出してもいい四球」がある
村澤:次に救援力。リリーフのほうは、先発と同じように失点を使っているんですが、今度はWHIP(1イニングあたりに出した走者の数)を見てきています。
志田:リリーフは、走者をどれだけ出したかが結構大事です。走者を出すとリスクが上がるのは当然なので、いかに走者を抑えて自分の仕事をしたか、というところに行ったんだなと。
志田:確かに救援でFIPを使うのは結構難しいと個人的には思っていて。というのも、リリーフ投手って、出してもいい四球があるんですよ。三振やホームランは防がなければいけないんですが、四球に関しては少しそういう考慮が入ってもいい。そこでWHIPを選んできたな、という感じはします。
村澤:四球を出しても、結果的に点を取られなければいい、と。
志田:そうですね。内容よりも結果のほうに行っているんだろうなと。先発も大事ですが、リリーフは勝ちゲームの終盤で投げるので、1点の重みが一番高い。後半のほうが比重が高い、という判断を多分したんだろうなと思います。
長打力・出塁力 ― 純粋な長打と、選球眼
村澤:続いて打撃です。長打力は、ISO(長打率-打率)と、打席あたりの本塁打。打率を除いた純粋な長打の力、と言っています。
志田:これはいいんじゃないですかね。長打力と言っても、普通に長打率で考えると、シングルヒットでも数字が上がってしまうので。ISOで純粋な長打力を測るのであれば、いいのかなと思います。
村澤:続いて出塁力。これは出塁率と四球率ですね。
志田:単純に率だけを取ってこないところがポイントですね。僕だったら単純に出塁率を採用してもいいのかなと思うんですが、そこに四球率を入れてきた。選球眼に比重を置いたんだろうなと思います。単純に打って出たのではなく、ボールを見極めて出た、というところにも重みを置いた。四球を選ぶのは大事な能力なので、大切だなと思います。
守備力 ― 失策を入れたのは「試合の感覚」に近い
村澤:次に守備力です。DER(守備効率)と、1試合あたりの失策でできています。
志田:これも、失策を入れてきているんですよね。セイバーメトリクスの世界では、失策はそこまで守備力に影響しない、とも言われています。守備範囲が広い人は、打球に届いてしまってエラーになっている可能性もあるし、守備位置もあるので、一概には判断できないだろう、という意見もある。それでも「失策は守備力に必要だよ」と入れてきた。僕は、無機質な数字というより、AIのほうがむしろ実際の試合の感覚に近いものを取ってきているな、という感じがします。
村澤:選手1人1人の評価だったら守備範囲などもあるけれど、チームとしては、ポジショニングも含めてエラーが出ているのを入れている、と。
志田:入れてきていますね。一般的には、UZR(アルティメット・ゾーン・レーティング)を使うのが主流なんですが、DERを入れてきたのも興味深いところです。
村澤:これはデータの限界もあって、いわゆる公式記録だとUZRが取れないんです。
志田:なるほど、そういう背景もあるんですね。
走力・捕手力 ― 「打てる捕手」を重く見た
村澤:続いて走力。こちらは1試合あたりの盗塁と、盗塁の成功率です。チャレンジの多さと、成功率の両方を見ている感じですね。
志田:確かにそうだなと。村澤さんがおっしゃったように、取れるデータの範囲という話もあります。最近は走るスピードも測れるようになってきたので、そういうものを入れていくと変わってくるかもしれませんが、AIの中では、取れるデータで走力と言えば盗塁なんだろうな、という感じがします。
志田:結局、盗塁にチャレンジしたくても、足の速い選手がいないと盗塁はできない。チャレンジできたのか、そのうえで成功率はどうだったのか、という出し方をしているんだと思います。
村澤:続いて捕手力です。盗塁阻止率と捕逸、それから捕手のOPS(打撃)を入れてきています。
志田:打撃のほうに比重を置いた、というのが独特で、興味深いですね。キャッチャーは守れればいいというのではなく、オフェンス側の能力も必要だよ、というところで。最近はそちらを重視する人も増えてきたので、その情報を取って入れてきたのかなと思います。
村澤:打てるキャッチャーも増えてきましたしね。球団ごとに、キャッチャーに打撃を求めるかどうか、という違いもありそうです。
志田:それはありますね、確かに。
世代循環 ― 一番難しく、ドラフトに一番関わる軸
村澤:最後が世代循環。若手を使っているかどうか、です。AIが出してきたのは、25歳以下の選手がどれだけ打席や投球回を稼いでいるかと、加重平均年齢。この辺りは読み方が難しいと思うんですが。
志田:これが多分一番難しいところだと思うんですよね。世代循環は、どこに基準を置くかという問題があって。たとえばすごく強いチームだと、レギュラーががっちり固まっていて、若手が入る隙がないということも正直あります。でも実は、いい選手が下にいる、ということもある。
志田:逆に、若い選手が出場していても、実はチームのポジションが埋まっていないから出ている、というケースもあります。それが本当に「循環」なのかは難しいところですが、打席数の与え方や、どのくらい投球回を投げているかで見るのは、いいのかなと思います。
村澤:ベテランが脇を固めていても、使ってみたいという選手がいると、出番が回ってくる、と。
志田:そういうことですね。この辺りが、ドラフトに一番関わってくる要素なのかなという気がします。
12球団のレーダーで見えたこと
村澤:今の8つの軸で12球団を分析したグラフがこちらです。上が先発・救援の投手、右下が長打・出塁の打撃、左下が守備・走塁です。
志田:これは非常に面白い形だと思います。パッと見て、やはり今年成績を残した上位のチームはレーダーが広い。逆にBクラスに行ってしまったチームはレーダーが小さい。結果から見ても合っているな、という感じがします。
村澤:点線が平均なんですが、日本ハムはすべての軸が平均以上で、ものすごくバランスが取れていますね。
志田:これもファンの方の印象どおりだと思います。今年躍進したライオンズも、チームとしてかなりいい感じに成長しているんだろうなと。阪神さんも、どの層を取ってみてもいい感じに来ているのが一目瞭然ですね。
村澤:逆に、阪神とソフトバンクは、世代循環のところが少しへこんでいます。
志田:両チームとも、選手として脂が乗っている時期の選手が多いという感じがします。次に出てくる25歳以下の選手に、レギュラーに割って入っていける能力の選手がどれだけいるか。そこでこうなっているのかなと。
村澤:西武は世代循環がすごく伸びていますね。これからますます強くなっていくのかな。
志田:伸びていますよね。ロッテさんも世代循環は伸びています。今年はBクラスになってしまいましたが、世代循環としては、いい感じに進めているのかなと思います。
村澤:ヤクルトは、長打力がすごくへこんでいますね。
志田:主力が抜けた影響はあると思います。神宮球場はホームランが出やすいという点もありますが、ここがウィークポイントになっている。打たれても打ち返す、というチームカラーだと思うので、ここがへこんでいるのは課題なんだろうなと思います。
村澤:そういう意味だと、巨人さんも長打力が下がっていて、データ上もそれが示されています。
志田:ただ、ジャイアンツはおそらく走力が伸びたと思うんです。今年は盗塁の数をすごく増やしてきていたので、長打が減る分、そっちで行こうという戦略もあったのかなと。へこみ具合と、それをどこでカバーしようとしたのか。そういうチームの努力の痕跡も、このデータから見えるのかなと思います。
志田:きれいな八角形が当然理想ですが、そこはなかなか難しいと思うので。ここから、補強ポイントがどこなのか、足りないところはどこなのかも当然見えてきますし、今年の戦い方も同時に見えるチャートだったと思います。
球場補正 ― 甲子園は一番ホームランが出にくい
村澤:今回の特徴として、球場補正を入れています。ホームランが出やすい球場がある、甲子園はエラーが出やすい、といった話です。
志田:要は環境ですよね。これは入れなければいけない要素です。データの正確性を出すためにも、絶対に入れなければいけない。
村澤:グラフの見方としては、上のほうがホームランが出やすい球場、下のほうが出にくい球場です。打撃だけでなく、守備のほうも、エラーが出やすいかどうかを補正しています。
志田:これは、たとえば神宮ならヤクルトにホームランバッターがいるかどうかに関係なく、球場そのものの出やすさ・出にくさを出せている、ということですよね。
村澤:そうですね。神宮で、ヤクルト以外も含めた全チームのホームランの割合を見て割り戻しています。
志田:面白いのは、佐藤輝明選手や森下選手がいる甲子園球場が、実は一番ホームランが出にくい。それにもかかわらず打っている彼らはすごい、という見方ができる。一方で、神宮は一番出やすい。それでもヤクルトさんは長打力が弱点になってしまっている。
村澤:みずほPayPayやエスコンフィールドは、ホームランが出やすいですね。割と新しい球場がそういう設計になっている。
志田:エスコンは、最初は広くて入りにくいんじゃないかと言われていたんですが、始まってみたら、非常にホームランが出やすい球場だと分かってきました。僕も行ったことがあるんですが、バッティング練習でボンボン入るんです。普段は練習で入らない選手も、平気でスタンドインする。これは間違いないと思います。
村澤:東京ドームはよく出やすいと言われますが、データだけで見ると、みずほPayPayやエスコンのほうが出やすい。2024年からのデータで見ても、この上の3つのほうが出やすくなっています。
村澤:逆に言うと、ホームランが出にくい球場では、守備から作っていく、といったチーム作りもあるんですかね。
志田:あると思います。1人1人の能力もあれば、ポジショニングもある。それに屋外球場は風もあって、環境的に難しいところがあります。甲子園もそうですが、そういうことも踏まえてチーム編成をしていかなければいけないんだな、と、これを見ると思いますね。
データだけでは分からない、球団の戦略
村澤:ドームでも、京セラやベルーナはホームランが出にくいですね。
志田:京セラは単純に広いですよね。バンテリンも広い。ベルーナも、これを見ると出にくいんでしょうね。
志田:さっきのレーダーチャートに戻ると、西武さんはピッチャーがいいんですよね。ホームランが出にくい球場だと分かったうえで、強力打線で勝っていた時代もありましたが、今のメンバーを考えて、ディフェンスのほうに舵を切った可能性もあるのかなと。ホームランではなく、走力や守備で勝っていく。予想ですが、それが今年の結果に結びついた可能性もあると思います。
村澤:こういう球団の傾向を見て、補強ポイントを考えていく。データだけ見ても分からない、球団の戦略もありますよね。
志田:ドラフト、非常に楽しみですね。
(この対談は、2026年10月9日公開のYouTube動画「【元侍スコアラー志田宗大×AI】プロ野球12球団をAIはどう見た?仮想ドラフト会議の分析を徹底解説」をもとに、読みやすく編集したものです。データ:NPB BIP(2026年9月4日終了時点)/一般社団法人日本野球機構(NPB)承認、NPB BIP データ利用)
【動画】元侍スコアラー志田宗大×AI ― プロ野球12球団をAIはどう見た?
この対談の動画版です。12球団のレーダーチャートや、球場ごとのホームランの出やすさのグラフは動画でご覧いただけます。
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