【対談】阪神は打撃も守備も過小評価?元WBCスコアラー志田宗大と読む、球場補正で見えた12球団の「本当の姿」
AIで分析したプロ野球12球団の補強ポイントを、元WBCスコアラーの志田宗大と深掘り。優勝チームの世代循環、二軍の若手の使い方、球場補正で見えた阪神さんの過小評価まで、代表の村澤清彰と語りました。
AIが出した補強ポイント、プロの目で気になるところは
村澤:ライブリッツの村澤です。今日も、WBCの元アナリストで、ライブリッツのシニアアナリストを担当してもらっている志田くんに来てもらいました。
志田:よろしくお願いします。
村澤:10月10日の放送、お疲れさまでした。
志田:ありがとうございました。海千山千、百戦錬磨の方たちだったので、緊張しながらやりましたけども。
村澤:今日は、番組であまり紹介できなかったところを、詳しく聞かせてもらえたらと思っています。まず、あくまでAIが出した補強ポイントではあるんですが、何か気になるところはありますか。
志田:やっぱり、勝っているホークスさんとタイガースさん。優勝したチームは、今の戦力はもう充実している。次は世代循環だよ、というところに行っているなというのが1つ。基本的に、戦力の足りている・足りていないを見るときは、投手・打撃が主になると思うんですけど、このAIで出すと、より具体的に、その中でもどこなのか。救援力とか、ピッチャーの中でも先発とか、あるいはあまりスポットを浴びるところではない守備や走塁にも着目している。
志田:カープさんなんかは、局所的に「キャッチャーなんだ」と言い切っちゃっている。これは特徴的だなと感じますね。
ヤクルトさんは長打力、中日さんは救援力 ── 印象どおりの結果
村澤:ヤクルトさんは長打力。
志田:長打力に関しては、村上選手、村上選手とずっと言ってしまうのもあれなんですけども、神宮球場の特性を考えたうえでも、やはり得点力が足りなかったよね、というところなので。この辺は印象どおりというか、数字に上がってきているな、というところですね。
村澤:村上選手が抜けた穴を、走力で少しカバーしているとは言っても、そこだということですかね。
志田:そうですね。やはり走力だけでは埋めきれない。結局は得点というところに行くと、中でも何が足りないかというと長打力、ホームランというところに行ったのかなという感じがしますね。
村澤:もう1つ、番組でも取り上げてもらったドラゴンズさんの救援力。
志田:これは、投手の中でも具体的に「後ろが足りない」というところで。絶対的守護神の松山投手がいらっしゃるんですけども、結局そこにつなぐまで、というところですね。先発のクオリティスタートは、ドラゴンズさんはセ・リーグの中でも上位のレベルなんですよ。6回を3失点以内に抑えたからなんだ、という話もあるんですけども、ゲームを作れているということで言えば、そこまではいけている。
志田:番組でも申し上げたんですけど、試合をひっくり返されたことが多い。全部が全部、後ろのせいではないんですけど、そういうところも含めて、この救援力に行ったのかなという感じですかね。
優勝チームの穴は「世代循環」
村澤:見ていてやっぱり気になるのが、ソフトバンクホークスさんと阪神タイガースさん。優勝したからこそ、穴といえば世代循環だと。
志田:そうですね。何度か申し上げていますけど、優勝するということは、脂が乗り切っている選手たちが多いというのは事実としてあって。脂が乗り切っているというのは、少し年齢を重ねていったときに迎える傾向がやっぱりあるので。その下の25歳以下や、育成のところ、ファームはどうなっていますか、というところが出ているのかなという感じはしますね。
村澤:ホークスさんだったら、世代循環の中でも先発ですね。
志田:そうですね、高校生の先発ピッチャーみたいなところですね。AIでデータを入れて出すと、こういうところが多分ポイントなんだろうと。なんとなく合っている感じはします。今年は前田投手が出てきましたけど、そういう選手をもう少し。年数はかかるんですけど、そういうところで埋めていったほうがいいよ、と言っているように見えます。
ヤクルトさんは投手か、野手か ── 古田さんとの議論
村澤:番組では、ヤクルトスワローズさんは長打力、スラッガーに行かないと、と言っていました。この辺りは変わりますか。
志田:古田先輩には「いかんぞ。お前、何言ってるんだ」とお叱りを受けまして。実は収録の途中に話したんですけども、「そんなのピッチャーに決まってるやん」と言われて。ピッチャーの中でも、こういうピッチャーを取らないかんと思うんだよな、ということは古田さんご自身はおっしゃっていたんですけども。とはいえ、古田さん、点取れませんよ、というのは心の中に置いておいてですね。
志田:でも事実として、投手か野手かって、ヤクルトさんは本当に悩ましいんですよね。どっちか取らなきゃいけないんですけど、実はどっちもなんですよ。どっちもと言ったときに、データで見ると、長打になっていますね。
村澤:あとは、これはあくまで現状の戦力の足りないところで、埋め方としては、ドラフトなのか、FAなのか。
志田:外国人もありますしね。
村澤:その辺りは、どこをどう押さえるか、ということですかね。
志田:そうですね。なので、今年のFA市場や、取ってこられる外国人選手の中にどういう選手がいるのか、というのも結構大切で。それを取りに行くのか行かないのか、というのも、当然ドラフト会議や戦力補強に関わってくることだと思うので、大切だなと思います。
志田:ただ、よく現場で言われていたのは、「新人選手を戦力の当てにしちゃいけないよ」ということで。やってくれれば儲けもの、というところもある。やはり新人なので。その辺の戦力のバランスをどう見極めていくか、というところもあるのかなという感じがしますね。
即戦力の救援投手は、今年のドラフトにいるか
村澤:確かにそうですね。たとえば、救援力が必要な楽天イーグルスさんが即戦力の救援投手を取っても、すぐに活躍できるものなんですか。
志田:意外と、ずらっと見させていただいた中では、いそうだなという感じはしたんですよね。ローテーションを守って1年間というと本当に限られますが、最近はアマチュアでも球速が上がってきて、すぐ使えそうな投手も何人か出てきたと思うので、今年はいると思いました。
村澤:じゃあ、救援力が補強ポイントの球団同士で、争奪戦みたいな。
志田:争奪戦ですけど、番組で山本昌さんがおっしゃっていたとおり、アマチュアはやっぱり先発をやっているので、救援の適性を見極めるのが難しいという話で。確かにおっしゃるとおりだなというところはあって。最初から救援で取るのはなかなか珍しいかなと思うんですけど、社会人や大学生にいそうだなという感じはしましたね。
村澤:ヤクルトさんのところは、古田さんは外国人で埋める、みたいな話もされていたんですけど、一方で、ヤクルトさんの長打力が下がったのは、村上選手が抜けたから。
志田:これはもう、言わざるを得ないかなという感じですね。彼がチームを引っ張ってきて、ヤクルトさんも連覇したという事実がありますし。彼の穴埋めはなかなか難しいと思うんですけども、ずっとほったらかしにはできない。(長打を打てる選手が)いるときに行きたいな、というところはありますね。
村澤:ファンとしては、将来の村上選手、岡本選手を育ててほしい、みたいなところもありますからね。
志田:やっぱりあると思うんですよね。今は、打順の役割として4番がどうこう、と言われる時代ではなくなったとは思うんですけども、強いチームにはやはり、4番を絶対的に打てる人がいると思うので。そういうところに関して言ったら、足りないかなという感じはしますね、この両チームは。
6軸から8軸へ ── 捕手力と走力を入れたら、3球団が変わった
村澤:あとは、これはAIに分析させた結果ではあるんですけど、実はちょこちょこ工夫というか、改善をしていました。その辺りの意見をもらいたいんですけど。いちばん最初にAIに聞いたら、まず6つの指標でした。先発・救援・長打・出塁・守備と世代循環で、捕手と走力がなかったんですよね。
村澤:今の時代はその2つ、捕手と走力がいるよ、ということで入れさせたんです。そうしたところ、3球団の補強ポイントが変わった。
志田:なるほど。
村澤:捕手と走力を入れる前は、DeNAさんは先発だったけど、走力を入れると、そこが補強ポイントになった。広島さんは元々長打力だったけど、捕手を入れてみるとそこだ、と。西武さんも、出塁力を分解すると走力です、みたいな形になったんですけど、この辺り何かありますか。
志田:6軸から8軸に増えたところで、捕手と走塁が入ってきたのは、視点としては面白いかなと。要は、AIの側も、勝つためには、チームが強くなるためには、実はここが欠かせないんですよ、という判断をしたんだろうな、という感じですね。
村澤:なかなか見ないんですよね、走力とかって。
志田:これを見ていただくと分かるとおり、ヤクルトさんは先ほど言った村上選手が抜けたんですけど、岩田選手が出てきて、走力を上げてきた。他にも足の速い選手がいるので。今年はジャイアンツさんも、浦田選手がレギュラーですごく活躍して、岡本選手がいなくなったんですけど、その代わり走力としては上がってきた、というところがありますね。
志田:ライオンズさんは、印象としては足の速い、走力のある選手が多そうなんですけど、意外と補強ポイントなんだな、というのは特徴的です。それから、横浜スタジアムとの関係もあって、走力よりも長打、というのがチームカラーとして、チーム方針と結構一致している。おそらくそういう方針でやっていると思うんですけど、それを体現しているのはDeNAさんだなと思います。カープさんについては、ファンの方の予想どおりかなという感じはしますね。
村澤:横浜さんは結構面白いですね。狙いどおりというか、球団の戦略どおりだから別にいいよ、という感じにしている。
志田:面白いですよね。ウィークポイントとして出たけど、分かってるよ、みたいな。
村澤:それでいいんです、という感じで。
補強ポイントは二軍で埋まるか
村澤:もう1つは、補強ポイントは二軍で埋まるか。二軍をAIがどう分析したか、というところなんですけど。ざっくり言うと、上下が人数ですね。二軍の若手が多いか少ないか。左右の軸が、一軍に若手が出ているかどうか。
村澤:右上は、二軍にも若手がたくさんいて、一軍でも使えている。これがDeNAさんと西武さんで、ここにいるといい、という判断ですね。左上のソフトバンクさんは、確かに若手はたくさんいるけど、なかなか一軍の機会がない、ということです。
志田:面白いですね。ご覧になっているファンの方たちは、どうしても世代のことが気になると思うんですよね。今どの位置に自分のチームがいるのかが一目で分かるので、期待が持てたり。なんとなく、これも印象どおりだなと思います。たとえば楽天さんは、人数としては普通なんだけど、世代循環があまり行き届いていない、という感じなんですかね。
村澤:なかなか一軍で出場する若手がいない。いないのか、機会がないのか、ということですね。いずれにせよ、ホークスさんと同じくらい、若手が試合に出ていない。
志田:同じパ・リーグで、ということですね。じゃあ、下に行くと、結局、若手があまりいないということなんですかね。
村澤:そうですね。逆に言うと、少ないけど一軍でたくさん出している、という判断もできるところです。右下のほうが、実は期待値は高いかもしれないです。
志田:あ、こっちですか。ロッテさんとかカープさんとか。確かに、若手を使っていましたもんね。
村澤:若手を一軍でたくさん使って、経験値が伸びているので、今後の可能性がある、という見方ができますね。
志田:なるほど。とにかく右側に来ることが条件だ、ということですね。この見方をすれば、左上のチームは、一軍の機会はないんだけど、出ればすごく活躍する選手がいる可能性はある。これは結構面白いなと思って見ていました。
村澤:阪神さん・ソフトバンクさんが左に来ているのは、やっぱり強いチームだから、なかなか機会がない、というのが出ている感じですね。これからのチームはやっぱり若手を育てる。逆に言うと、チームの方針が見える。
志田:チーム方針としても、何かあるなという感じがしますね。
二軍で何打席与えているかに、球団の意図が見える
村澤:この辺りは、若手が二軍でどれだけ出たか、立った打席数、どれだけ打席を与えたかを出しています。意外とソフトバンクさんは少ないですね。
志田:最近は、ファームで何打席与える、というのは絶対あると思っていて。たとえばDeNAさんのドラフト1位の選手などは、ちゃんと打席数をかなりこなしているな、と。育成の戦略的なところを感じます。ホークスさんにもそういう選手がいて、そこはチームの意図が見えるなという感じはしますね。
村澤:確かに、300打席とか与えていると、期待している選手、みたいな。
志田:そういう感じですね。機会を優先的に、もちろん結果も出していますけども、与えているなと思います。面白いですね。
球場補正を入れると、阪神さんは打撃も守備も過小評価だった
村澤:あとは、先ほど出た球場補正です。ホームランが出やすい・出にくい、という話でしたが、補正を入れて補強ポイントが変わったところがあります。補正を入れる前は、ファイターズさんは救援力だったんですが、補正を入れると救援力はプラスになって、あえて言うなら出塁力。ジャイアンツさんは、出塁力から長打力に変わりました。
志田:補正を入れると、多分皆さん「ここだ」と思うんですよね、ジャイアンツさんの長打力は。出塁というのは、相手が警戒してくれてフォアボールを取れるという要素もあれば、そもそもコンタクトが高いという要素もある。その2つがあるんですけれども、そこを少し落としてもいいから、とにかく長打が欲しい、という結果になったんだなと。一時期は空中戦に持ち込んで勝つ、というスタイルだったので、そこが今足りないのかなという感じがしますね。
村澤:選手からすると、たとえばピッチャーなら、ホームランの出やすい球場で戦っているんだ、というのを加味してほしい、みたいなのはあるんですかね。
志田:いや、それは言ってます。どうしても成績が悪くなるんですよね。当たり前なんですけど。球場補正、パークファクターを入れてほしい、という声は聞いたことがあります。どこまで反映されているか、という感じですかね。
村澤:たとえば横浜スタジアムは、昔からホームランが出やすいと言われていて、球場のサイズも変わっていないんですけど、意外と普通で、出やすくもない、という結果になっていますよね。
志田:印象としてホームランが多いのは、長打力が高いから、とも言えると。
村澤:逆に言うと、阪神タイガースさんは甲子園で。
志田:甲子園でホームランが出るというのは、すごいことなんですよ。しかも、ホームラン争いの上位2人が阪神さんの選手だというのは、価値が高いのかなという感じがしますね。
村澤:守備力のところでは、阪神タイガースさんは、そのままだと平均以下だったんですけど、パークファクターを考えると、実はそんなに悪くない、むしろいいほうだった。
志田:エラーは確か少し多いんですけど、そんなに守備は悪くないんだよ、実は。球場が守りづらいからね、という。
村澤:そう、そう、そう。土の球場なのにもかかわらず、守備力は悪くない、という評価です。
志田:補正をすると、実はいい、という評価ができるのは面白いですね。言い方は正しくないかもしれないですけど、タイガースさんの選手が人工芝に行けば、もっとうまい、という判断でいいですか。
村澤:そういうことですよね。逆に、これが出ているのが巨人さんで、今度は守備力が下がっていく。人工芝で、風のない東京ドームの割には、ということで。
志田:これ、面白いですね。
村澤:面白いですよね。たとえば阪神タイガースさんの選手がみずほPayPayでやると、エラーが少なくてホームランが多くて、最強だな、という。
志田:じゃあ、もし甲子園がドーム球場になって、人工芝になって、サイズも少し狭くなったら、もっと勝つ可能性がある、と。
村澤:球場のサイズって大事なんですよね。
志田:そうなると、今度はピッチャーがどうなるか、という感じで面白いですね。
村澤:見たままよりも、そういう補正を入れると、本当の姿が見える。
志田:本当のチームの姿ですね。
AIを参考にするのが、新しいプロ野球の姿
村澤:今日は、いろいろ深い話を聞かせてもらいました。ドラフト、楽しみですね。
志田:楽しみですね。番組でもそうだったんですけど、最初は「AIだろ? AIが言ってるんだろう」と始まったんです。でも実は、言わなかったんですけど、私も若干引っ張られていた感があって。パネルがこう言っているから、やっぱりこれだ、という感じになっちゃうので。各球団さんがどこに判断基準を置いているのかは分からないんですけども、これを見た感じ、僕は合っているなと思っていまして。こういうものを参考にしながら、というのは、新しいプロ野球の姿に入っていったのかなと思います。
村澤:いろんな見方があって、たとえば自分はキャッチャーはいらないと思ったら、また変わります。ぜひ視聴者の方も、ドラフトを楽しんでいただければと思います。今後もこういう企画をやって、個人的には「志田AI」を作りたいなと。
志田:いやいやいや。私の知見や考えを注入しても、という感じがしないでもないんですけど。ただ、私ではなくて、先日一緒に出演されたレジェンドの方々の知見を後世に残していくという意味でも、古田さんの配球論などが残っていくと、財産として、文化として残る。それは、野球とAIにとって大事かなと、個人的には思っています。
村澤:そうですよね。ライブリッツAIチャンネルとしては、いろいろチャレンジしていきたいと思いますので、よければチャンネル登録をお願いします。
(この対談は、2026年10月10日公開のYouTube動画「【元WBCスコアラー志田宗大×AI】阪神は打撃も守備も過小評価?AI分析で見えた12球団の"本当の姿"」をもとに、読みやすく再構成したものです。)
【図版】AIで読むプロ野球12球団の補強ポイント(キューステ!)
対談で話題にした8軸レーダー、二軍の若手マップ、球場補正のグラフなど、分析の図版7枚をキューステ!で公開しています。
キューステ!で見る →