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ライブリッツ株式会社

PRESIDENT INTERVIEW

社長インタビュー

選手のためのAI、ファンのためのAI スポーツから他産業へ【後編】

ライブリッツ代表取締役社長 村澤清彰に聞く、生成AIでスポーツ産業はまだまだひろがる

プロ野球12球団のうち5球団に、チーム強化のためのデータ分析システム「FastBall」を提供するライブリッツ。前編では、2012年にゼロから立ち上げたその仕組みが、野球からサッカー、ラグビー、ハンドボールへと競技を越えて広がってきた14年を聞いた。

選手一人ひとりのデータを集めて、見えるようにする。その積み重ねに、いま生成AIが加わろうとしている。選手のために集めたデータが、こんどはファンのほうへ向かう。データと生成AIで、スポーツを産業としてどこまで伸ばせるのか。代表取締役社長の村澤清彰に聞く後編。

AIがもたらす、2つの変化

── スポーツ界に対して、AIはどのような変化をもたらしますか。

大きく2つあります。ひとつは、選手のためのAI。もうひとつは、ファンのためのAIです。

選手のためのAI ── 日本がもともと持っていた強み

これまで一部のトップチームしか手にできなかった分析を、AIなら誰にでも届けられる。専門家が一人ひとりの隣に立っている状態を、AIで作ろうとしています。

── 何を測って、AIは何をするのですか。

ボールの回転数、リリースの位置、スイングの軌道。測る機材はプロが使っているのと同じもので、これは市販されています。

大事なのはその先です。その数字が何を意味するのかを、元プロの知見を学習したAIが言葉にして返す。そこが私たちの仕事です。

プロの一部だけが持っていた環境を、アマチュアの現場にも届ける。そのための取り組みを並行して進めています。

── そのAIは、何を学んでいるのですか。

日本の選手は、ずっと体格で不利でした。だから相手を研究して、工夫で埋めてきた。野村監督のID野球もそうです。日本のスポーツは、もともと分析の文化を持っていたのです。データとAIは、それを新しい道具に置き換えているだけだと思っています。

当社には、元侍ジャパンのスコアラーがいます。相手を丹念に見て、勝ち筋を探す。その積み上げが、そのままAIに学習させるデータになる。日本が持っていた強みを、そのまま次の道具に載せ替えているところです。

── どうやってAIに覚えさせるのですか。

チームの戦力分析で使っています。AIが出してきた分析指標に対して、この指標を入れてくれ、この観点が要る、と指示していく。

その計算のしかたをAIが覚えると、同じ分析手法が誰にでも使えるようになる。一人の頭の中にあったものが、道具になるわけです。

── AIは、実際にはどんな文章を返すのですか。

投球のレポートだと、例えばこう書きます。「回転数は2103rpmで超優秀。平均球速135.7km/hに対してこの回転数は、ボールのキレやノビに繋がる大きな強みと言えます」。

そのうえで、課題もはっきり言います。「せっかくの質の高いボールも、ストライクゾーンに投げ込めなければ効果を発揮できません」。数字を並べて終わりではなく、何が強みで、何から直すべきかまで書く。

── 練習メニューまで出るのですか。

出ます。回転数を上げたいならメディシンボール投げを週3回、10回を3セットなどと提案し、注意点まで添えてくれます。

最後は本人への言葉で終わります。「君の成長は目覚ましいものがあります。体重と筋肉量の増加、そして打球速度の向上は、君の努力の証です」。専門のコーチが一人ひとりに書いてくれる手紙を、AIが用意しているようなものです。

ただし、レポートの最後には必ず「実際の指導者に相談してください」と入れています。AIが出すのはあくまで参考であって、決めるのは人ですから。

ファンのためのAI ──「点」から「線」へ

── もうひとつの、ファンのためのAIとは。

これまでスポーツでファンに届くのは、試合という「点」だけでした。生成AIで、選手のデータを言葉にできるようになった。練習の積み重ねや、努力の過程まで物語として届けられる。点だったものが、線として届けられるようになるんです。

選手のために集めたデータが、そのままファンに届けるドラマになる。同じデータが二度効くようになった。これが生成AIによる一番の変化だと思っています。

── 実際に、どのくらい変わったのですか。

分かりやすいのは手間のほうです。ファンクラブの会員に送るメールマガジンは、1本作るのに1時間ほどかかっていました。いまは3分です。

ただ、本当に大きいのは速くなったことではなく、作れる量が変わったことです。1時間かかるなら、全員に同じものを送るしかない。3分なら、相手ごとに変えられる。

映像も同じです。30年分の試合記録を学習させて、ハイライトを組み立てる仕組みも動いています。人がすべてを見て切り出すのは、もう現実的ではありません。

── ファンの反応で、印象に残っているものはありますか。

トリプルヒーローゲームで、攻略法が語られていたことですね。先発投手を選ぶとポイントがもらいやすい、とか。

それだけゲームに興味を持って、理解しようとしてくださっている。ありがたかったです。

── 数字をそのまま出せばいい、というわけではない。

そこは失敗から学びました。正確なデータを出すこと自体にリスクがある、と感じた経験があります。

スポーツはドラマでもあるので、数値をそのまま出すだけでは魅力になりません。受け取る人の気持ちとずれると、むしろ逆に働くこともある。そこが難しいところです。

── では、これから届けたい物語とは。

選手一人ひとりの物語を、親御さんや家族、友達に届けてあげたいと思っています。

日々努力して、成長して、それでも結果が出ないことはあります。それでも、どういう努力をして、何が伸びて、どれだけ成長したのか。それを、その選手に関わっている人たちに届ける。そういうサービスを作りたいです。

スポーツは、毎日ドラマが生まれる

── スポーツを「産業」という言い方でよく語られますね。

スポーツは、毎日ドラマが生まれる場所です。試合だけじゃなく、練習にも、選手一人ひとりにもドラマがある。それが人を惹きつけるから、産業として成り立つのだと思います。

── ドラマ、というと。

特に印象深いのが2023年のWBCの準決勝ですね。それまで打てていなかった村上選手に、監督が最後まで任せた。そして最後についに打った。

2009年のWBCの決勝もそうです。ずっと不振だったイチロー選手が、最後の最後に決勝打を打っている。

大きな試合だけではありません。甲子園なんて、どの試合にもドラマがある。勝った側にも、負けた側にも。

データと生成AIは、そのドラマを見つけて届けるまでを、一気に速くします。だからスポーツ産業は、まだまだ伸びるし、もっとひろがると思っています。

── 発想自体は、以前からあったのでしょうか。

実はこの発想自体は前からありました。2019年に、巨人軍の会員サイトで、試合中の勝利貢献度をそのまま予想ゲームにする仕組みを作っています。ただ当時は、ひとつ作るのにプログラムを書く必要がありました。生成AIなら、選手一人ひとりの分を即座に作れる。そこが決定的に変わったところです。

── どこまで実現しているのですか。

選手のデータを言葉にするところまでは、もう動いています。元プロの知見を学習したAIが、その選手の強みと課題を言葉にして返す。それをファンにとどける── そこがこれからやりたいことです。

スポーツの外へ

── スポーツ以外への活用も進んでいるそうですね。

ファン向けの仕組みも、実は選手向けとまったく同じでした。一人ひとりのデータを集めて、その人の特徴を知って、喜んでもらえることを返す。選手にやっていたことを、ファンにも当てはめただけなのです。

同じ仕組みが、いまテーマパークや飲食のお店でも動いています。試合を観に行く人と、お店に足を運ぶ人は、その場所での体験を楽しみに来るという意味で、同じでした。

── 実際に持ち込んで、発見はありましたか。

スポーツで積み上げたマーケティングの手法が、そのまま使えると感じました。一度試合を観に来てくれた人に、もう一度来てもらう。そのための手法が、スポーツにはたまっているのです。

テーマパークに来た方、お店に来た方に、どうやってまた来ていただくか。この課題はどの業界でも同じでした。試合に来た人にどうグッズを買っていただくか、という点も、ほかの業界の参考になると思っています。

そこに、生成AIが作った選手のデータやコンテンツを掛け合わせる。このファンには、この選手の、この物語を届ける。まだ入口ですが、広がりは無限にあると思っています。

スポーツで育った技術が、世の中の役に立つ。そこまで行けたら、いちばん嬉しいですね。

次の世代に、つなげる産業に

── 最終的に、何を目指しているのですか。

スポーツをやる人が増えて、見る人が増えて、投資が増えて、それが指導と環境に返ってくる。この循環をAIで回したい。

5年後にうまくいったと言えるとしたら、競技人口が増えていることだと思います。循環を実際に回して、その結果としてスポーツを楽しむ人が増えている。そこまで行きたいです。

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村澤 清彰(むらさわ・きよあき)

ライブリッツ株式会社 代表取締役社長。京都大学大学院工学研究科精密工学修了後、2001年フューチャーシステムコンサルティング株式会社(現フューチャー株式会社)に入社。2012年、プロ野球団向けチーム戦略・強化システム「Future FastBall」の開発を責任者としてゼロから立ち上げ、「経験と勘」の世界だったプロスポーツにデータ分析に基づく意思決定を持ち込む。2017年4月、ライブリッツ代表取締役に就任。2025年には生成AIでスポーツDXを促進する「FastBall AI」プロジェクトを始動した。